視野がかけていく「緑内障」

眼圧上昇を引き起こす

「緑内障」は、目に起こる病気としては白内障とならんでよく耳にする病名です。

これは、眼圧の上昇によって視神経が侵され、視野が狭くなったり、ときには失明することもある恐ろしい病気です。原因と症状の進み方によっていくつかのタイプに分けられますが、どのタイプにも共通するのが、「眼圧」が病状を左右するということです。眼圧のコントロールが重要なポイントとなる眼病です。

そこでもう一度「眼圧」についてです。眼球が丸い形を保っていられるのは、眼球自体に「適度な張り」があるからです。この適度な張りが「眼圧」です。

眼圧は眼球のなかの房水の量によって決まり、この量が増えすぎた眼球は、必然的にパンパンに膨張して張ってしまいます。
眼圧が高いというのは、このような状態です。房水は毛様体から湧き出たあと、水晶体と虹彩の隙間を通って前房というスペースに流れていき、最終的にシュレム氏管から眼球の外に出ていきます。
しかし、シュレム氏管が圧迫されたり目詰まりを起こすと、出口を失った房水が眼内にどんどん増え、眼圧が高まってしまいます。

こうなると、眼球の後方にある視神経乳頭という視神経の束が圧力を受けて正常にはたらかなくなり、視野が狭まるなど見え方の異常を引き起こすのです。

正常な眼圧は、10~20mHgですが、これを超えた場合、緑内障の危険度が上がります。

眼圧の上昇が視神経を侵す理由

では、緑内障になると、どうして視野狭窄などの障害が起きるのでしょうか。この理由をさぐるためにまず、視神経が圧迫を受ける様子をみてみましょう。

網膜の中心部には光や色を感じる硯細胞が1億個以上あり、これが約120万本の視神経につながっています。視神経は網膜の後方にある視神経乳頭というところで1つの束になり、大脳まで伸びていますが、この束になる部分では、神経線維がほぼ直角に折れ曲がるため、構造的に弱くなっています。

そのため眼圧が高くなると、この部分がまず圧迫を受けるようになります。神経線維は圧迫を受け続けると死んでしまい、もとにもどることはありません。

死んだ視神経につながっている硯細胞が視覚情報をキャッチしても、大脳に伝わることはなく、視野に見えない部分ができてしまうのです。

このようにして視神経が部分的に破壊され、視野が狭くなった状態が視野狭窄、そして万が一、すべての視神経が破壊されてしまった場合には、失明ということになります。

緑内障で起きる視野狭窄は、徐々に広がっていく場合と、急激に進んでしまう場合があります.徐々に広がっていくタイプだと、本人が視野の異常に気づくのが遅れがちで、気づいたときには視神経の7割程度が破壊されていることも珍しくありません。

また、治療せずに放置しておくと、発病してから20年ほどで、ほとんど失明状態になってしまいます。ゆるやかに進行しているからと言って油断をしていると危険なのです。

因を特定できる緑内障

次に、緑内障の種類について、くわしくみていきましょう。緑内障は、直接的な原因があるかないかで、3つのタイプに分かれます。

まず、原因のある2つのタイプについてです。1つめは、もともと目の構造に問題があるタイプです。これは、房水の排出口のある「前房隅角」という部分に異常があって、房水がうまく流れ出ていかないために発病します。

生まれつき眼圧が高い「先天性緑内障」と、症状が青年期以降にあらわれる「発達性緑内障」があります。

2つめは、目のけがや病気が原因で起きるタイプで「続発性緑内障」といい、次のようなものが含まれます。

まず「外傷性緑内障」は、目を強くぶつけたために前房隅角が傷つき、眼圧が高まって視神経に障害を与えてしまうものです。
病気の影響によるものとしては、糖尿病網膜症の末期に起きる「血管新生緑内障」「糖尿病性緑内障」、ぶどう膜炎にともなう「ボスナーシュロッスマン症候群」「水晶体溶解シュロッスマン症候群」、目のなかが出血ときに血液が房水の排出口を詰まらせてしまう「溶血性緑内障」などがあります。

さらに、「ステロイド剤」の副作用によって眼圧が高まる緑内障もありますが、服用している人すべてに起こるわけではありません。
続発性緑内障を治すには、まず原因となっている病気の治療から取りかかることが必要です。

原因の特定が困難な緑内障

原因が特定できるタイプに対し、直接的な原因がわからないものを「原発性緑内障」とよんでいます。先天性や続発性よりもずっと多いのがこのタイプです。

原発性はさらに、症状が少しずつ進んでいく「慢性型」、突然激しい痛みが起きる「急性型」、眼圧が正常なのに緑内障を起こす「正常眼圧型」に分けることができます。

同じ原発性緑内障でも症状の進み方がまったく異なるので、ひとつひとつみていきます。

じんわりとと症状が進んでいく慢性型を、専門的には「開放隅角緑内障」といいます。原発性緑内障のなかでは、発生頻度がいちばん高く、40~50代の近視の人に多くみられます。

このタイプでは、「開放隅角」という名前が示すように、房水の排出口がふさがれているわけではありませんが、排出口の手前にあるフィルターの目が詰まっているため、房水がスムーズに排出されません。このため徐々に房水がたまって眼圧が高くなっていくという特徴があります。

また、両目の視野が鼻側から欠けていくのも特徴です。しかし、こうした変化は微妙なものなので、目に異常が起こっていることになかなか気づけないという怖さをもっています。

また、慢性型の緑内障の特徴として、遺伝性が高いことがあげられます。家族にこの病気の人がいた場合には、症状がなくても定期的に検査を受けておくことが大切です。次に、慢性型とは対照的な進み方をする急性型についてみていきましょう。

失明の危険が高い急性型の緑内障

「激しく痛む」発作とともに、急激に症状が悪化するのが急性型緑内障です。症状の特徴となる激しい痛みは、房水の通り道にある水晶体と虹彩が、瞬間的に強く接触したときに起こります。

このとき、房水の流れが完全にせき止められて排出口をふさぎ、眼圧が急激に上昇してしまうためです。このように房水の流れをシャットアウトしてしまう現象を「瞳孔ブロック」といい、たとぇば長時間下を見ていて水晶体の重みが虹彩にかかり続けたときや、目の検査に使われる散瞳薬を点眼したとき、興奮したとき、あるいは暗いところでものを見ようとするなど、瞳孔が開きかけるときに起こるとされています。

この現象は、高齢者や女性、遠視の人に比較的多くみられ、これには水晶体が老化するにしたがって大きくなり、眼球のなかで虹彩と接触しやすくなることが関係しています。

瞳孔ブロックによって緑内障の発作が起きると、目の激痛のほか、頭痛、吐き気、視力低下、光のまわりに虹がかかったように見える「虹視症」などの症状が突然あらわれます。

この場合、発作から48時間以内に処置をしないと眼圧が上がり続け、失明する危険があります。しかし、なかには急性型緑内障なのに、痛みなどの発作を経験することなく、慢性型のようにゆっくりと症状が進んでいく方もみられます。

最近増えている正常眼圧型の緑内障

これまで説明してきたように、緑内障とは眼圧が高くなって視神経が侵される病気です。しかし、最近日本で増えているのが、眼圧は正常範囲内にあるのに緑内障の症状があらわれる「正常眼圧型」というタイプです。

このタイプには、まだまだわからない部分が多く、症状が起こるメカニズムすらあきらかになっていません。原因としては、眼球内に正常な眼圧にも耐えられない構造上の問題があるのではないか、あるいは硯神経に栄養を送り込む毛細血管の流れが悪いのではないか、視神経そのものが弱いのではないかなど、いくつかの説が考えられています。

現在、日本の緑内障患者数は約200万人。なかでも40歳以上では、なんと30人にl人が緑内障を患っていると推計されています。しかし、実際に治療を受けているのは2割のみ。

残りの8割もの人は放置したままなのです。この驚くべき数字の原因は、正常眼圧型緑内障の急増にもあります。正常眼圧型の場合、眼圧を検査してもまったく異常がなく、しかも初期の自覚症状が少ないために、自分が緑内障であることに気づかないという危険な状況に置かれやすくなるのです。

緑内障は、糖尿病網膜症に次いで成人の中途失明の原因第2位を占める恐ろしい病気です。このため、水晶体が老化によって大きくなりはじめる40歳を過ぎたら、たとえ自覚症状や眼圧の異常がなくても定期的な目の検査を徹底しなければなりません。

緑内障の初期症状を見逃さないポイント

発見が遅れると大変危険な病軍である緑内障を少しでも早く見つけるためには、どのような変化に注意すればよいのでしょうか。

まず、ほかの目の病雪同様に、視力の低下を感じたり、目の疲労感がひどく、肩こりや頭痛をともなうような場合は要注意です。目が重いと感じたり、かすむときも、単なる疲れ目と放っておかないで、必ず検査を受けるようにしましょう。

次に、視野の一部が欠けることはないか、視野に何も映らない黒い点がないかどうかを確かめましょう。視野の異常は、両目で見ているとなかなか気づかないものですが、目を閉じて片目ずつ調べるとよくわかります。
特に鼻側が欠けていないかチェックしてください。そして眼圧が高まっている場合は、眼球をまぶたのうえからそっと押してみると、異常を感じることができます。

もし、弾力性が失われているようなら、緑内障のシグナルです。また、急性型の緑内障の場合は、光るものを見ると、周囲に虹がかかったように見えることがあります。この段階で眼科での治療を受けることができれば、急性発作を防ぐことができます。

年に1度の健康診断で眼圧に異常がなかったからといって、緑内障の可能性がゼロというわけではありません。検査だけで安心せずに日ごろのチェックを習慣にしましょう。

緑内障の治療

治療で改善できる点

原因を特定できない緑内障には、急激に痛みと視力低下をともなう発作が起きる「急性型緑内障」、徐々に眼圧が上昇し、視野狭窄や視野欠損が広がっていく「慢性型緑内障」、そして眼圧自体は正常であるにもかかわらず、緑内障特有の症状があらわれる「正常眼圧型緑内障」という3つのパターンがあります。

症状がはじまるメカニズムはそれぞれ異なりますが、共通しているのは、房水の流れが滞って眼圧が高まるため(正常眼圧型にはあてはまりません)、視神経が圧迫されて視野が欠けたり視力が低下したりという症状を伴い、最悪の場合には、失明の可能性が高いというところです。

現在、緑内障の治療法には、薬物療法・レーザー治療・手術という3通りがありますが、いずれも病気の原因を根本的に改善して、病気になる前の状態にもどすことはできません。

視神経はひとたび死んでしまうと、もとどおりによみがえることは決してありません。このため、視力障害や視野狭窄が起きてしまってからでは、たとえどんな治療法を用いても、正常な視野や視力を取り戻すことはできません。つまり、治療の目的は、いかに症状の進行を抑えたり、発作の再発を防ぐかという点につきます。

急性緑内障の治療

ほかのタイプの緑内障とは適い、急性型の場合は、発作が起きたら一刻も早く病院で処置を受けなければなりません。発作が起きてからどれくらいの時間がたっているかで、処置の方法や成否が変わってくるのです。

まず、発作から24聞以内に病院に駆けつけることができた場合には、まず薬を使って眼圧を下げ、激痛をやわらげます。眼圧を下げる薬には点眼薬と点滴による静脈注射がありますが、点滴は心臓や腎臓に障害をもつ患者さんには使えないこともあります。

発作からあまり時間がたっていない場合には、房水のつくられる量や排出量をコントロールする効果のある薬物を使うだけで瞳孔ブロックが解除され、せき止められていた房水が流れるようになり、眼圧を→ げることができるのです。

しかし、これはあくまでも応急処置なので、効果がわずか数時間程度しか持続しません。孟まま放置しておけば、再び同じような発作が起こります。このため、薬で眼圧を安定させたら、「レーザー治療」で発作の再発を防止する処置をほどこすことになります。また、すべての患者さんに薬の効果が出るわけではありません。その場合は最初からレーザー治療で症状を改善することになります。

レーザー治療

急性緑内障の発作が起こる最大の原因は、房水が硝子体と虹彩の隙間から前方の角膜のほうへ通り抜けることができずにたまってしまい、房水に押された虹彩が房水の排出口をふさいでしまうことです。

このため、薬で眼圧を安定させたら、次に房水がスムーズに流れるように、新しい排出路を眼球のなかにこしらえなくてはなりません。
この治療を「レーザー虹彩切開術」といい、とても簡単にできるので外来でも受けることができます。手順は、虹彩にレーザーをあてて小さな穴をあけるだけです。すると、それまで硝子体と虹彩の隙間にたまっていた房水が、瞳孔を通らずに眼球の前方(前房) に流れ出すようになります。この部分に房水が流れ込んで押し広げられると、虹彩と隅角の接触が解消され、房水の排出もスムーズに行われるようになるという仕組みです。

発作が起きたときには、まず症状のあるほうの目にこの治療を行います。しかし、急性型緑内障には、時間をおいてもう一方の目にも発作があらわれやすいという特徴があるので、発作を未然に防ぐため、まだ症状の出ていないほうの目にも早めに同じ処置を行うことになります。

手術が必要になる場合も

からだへの負担も少なくてすむレーザー虹彩切開術によって、急性型緑内障の9割以上は治療することができます。いったんこの処置を行えば、それ以上、視野狭窄や視力低下が進むことはなく、緑内障の発作が再発することもありません。

ただし、この治療法は時間との競争です。レーザー治療の効果が期待できるのは発作から3日以内。これよりも時間がたってしまうと、接触していた虹彩と隅角が癒着を起こし、いくらレーザーで迂回路をつくっても、排出口はふさがれたままで使いものにならなくなります。

また、発作後すぐに病院に駆けつけたのに、レーザー治療を受けられない患者さんもいます。これは、もともと虹彩と角膜が接近しすぎていて、レーザーをあてると切る必要のない部分にまで傷をつけてしまう可能性がある患者さんの場合です。

そこで、こうした2パターンの患者さんは、「線維柱帯切開術」あるいは「線維柱帯切除術」という手術のいずれかを受けることになります。
これらの手術は、房水の排出口の手前にあるフィルターの一部に切れ目を入れたり、切り取ったりして、房水の通りをよくするという方法ですが、やはり発作から処置まで時間がたつと、症状の進行を抑える効果があまり期待できません。

なお、この2つの手術は慢性型緑内障の治療でも行われる方法です。手術について説明する前に、慢性型の治療法をくわしくみておくことにしましょう。

慢性型緑内障治療の選択肢

急性型緑内障は発作後の処置によっては、失明の危険のある恐ろしい病軍ですが、適切な治療を行えば、以後は症状の悪化の心配はほとんどありません。

これに対し、むしろやっかいなのが慢性型緑内障です。なぜなら、症状の進み方がゆっくりとしていて自覚症状も少ないため、治療の開始が遅れがちなうえに、どのような治療を行っても症状の進行を完全に食い止めることはできないからです。
つまり、慢性型の緑内障を起こしたら、一生眼圧のコントロールをしながら病気とつきあっていかなくてはなりません。急性型のように、突然失明するといった恐ろしさはありませんが、仮に治療がうまくいっても通院は続けなくてはならないのです。

さて、現在、慢性型緑内障を改善する治療法には、点眼薬・内服薬・レーザー治療と手術という4通りがあり、これらはいずれもそれ以上視野が狭まるのを防いだり遅らせたりするために行われます。

使われる薬

慢性型の緑内障と診断されたら、まず最初に点眼薬による治療を行うのが一般的です。治療の目的は急性型と同じく眼圧を下げ安定させることで、初めに目標眼圧を決め、房水のつくられる量をコントロールする点眼薬を使って、目標値まで眼圧を下げていくことになります。

そして、この薬だけで効果があらわれない場合には、房水の排出量を増やす薬をあわせて使います。以後は薬を使い続けながら定期的に通院し、点眼薬の効果を調べるために眼圧と視野の検査を行うことになります。

仮に眼圧が一定レベルで安定していることがわかっても、それは薬がうまく房水の量を調節しているからで、中断すれば間違いなく症状が進んでしまいます。
点眼薬をずっと使い続けなければならない理由はここにあります。そして、点眼薬だけではなかなか眼圧をコントロールできない場合には、内服薬の投与を始めます。

これには、房水の生産に関わっている毛様体に作用して、生産量を制限する強い効果があります。ただし、効き目が強い分、手足のしびれや腎結石といった副作用が出やすいので、服用する量や期間を慎重に決めなくてはいけません。
少量で効果があらわれない場合、薬を増やすことはせず、この方法を中止してレーザー治療を行います。

レーザーでフィルターを焼き切る

点眼薬や内服薬だけでは、眼圧を目標値まで下げることができない場合には、レーザー治療を受けることになります。慢性型の緑内障は、フィルターの目詰まりが原因となって眼圧が高まった状態ですが、問題を起こしているフィルターの一部をレーザーで焼き切って、房水を通りやすくするのです。

専門的には「レーザー線維柱帯形成術」といいます。レーザーによる処置自体はむずかしいものではなく、副作用の心配もありませんが、難点をあげるとすれば、効果に確実性が欠けるということです。また、効果が出たとしても、1~2年程度しかもたないので、数年おきに同じ治療を繰り返すというケースもあります。

手術が必要な場合も

これまで説明してきた薬物療法やレーザー治療でも眼圧が下がらず、症状が悪化している場合には、手術で進行を遅らせます。急性型のところでお話ししたように、この手術には2つの種類があり、いずれも房水の通りをよくすることが目的です。

どちらの方法を行うかは、症状がどの程度進行しているかによって決められます。比較的早い時期に病気が見つかった場合は、房水の排出口であるシュレム氏管の内壁を切って流れやすくする「線維柱帯切開術」を行うことがあります。ただ、緑内障の場合は、早期の手術が必ずしも効果的とはいい切れない面があること、また、慢性型緑内障を早期の段階で発見することは大変むずかしいことなどから、実施例はあまり多くありません。

このような理由で、現在一般的に行われているのが「線維柱帯切除術」という方法です。これは、排出口とフィルターが埋まっている強膜の一部を切り取って穴をあけ、房水の新しい通り道をつくるというものです。房水は、本来の排出口ではなく、結膜の下から眼球の外に流れ出るようになります。

ただし、強膜を切り取っただけでは、房水がどんどん流れ出てしまい、逆に眼圧が下がって虹彩と角膜の癒着を引き起こしてしまいます。これを防ぐために、穴をあけた部分を糸でかがって大きさを加減し、房水の通り抜ける量を調節します。

正常眼圧型の緑内障は、眼圧に異常がないのになぜか視神経に障害があらわれるというもので、いったい何が原因なのかはっきりしたことはいまだにわかっていません。
そのため治療に際しても、確立された治療法があるわけではなく、効果があるのではないかと推測できるものを症状にあわせて取り入れていくしかありません。

基本的には、慢性型の治療法に準じた方法がとられるので、薬物治療が中心となります。まず、正常な眼圧さえも負担になっているのではないかと考えられるため、眼圧を下げる点眼薬を使って、経過をみていきます。また、血液の循環や視神経のはたらきを高めるために、血行促進薬やビタミン剤を服用することもあります。

日常生活の注意

ここまでは、緑内障のタイプごとに行われる治療法をみてきました。しかし、症状の進行を少しでも遅らせるためには、ふだんの過ごし方にも十分注意を払わなくてはなりません。目の状態を定期的に観察するようにしてください。
注意する点は、目の使いすぎ、一度に大量の水分を取り過ぎない、十分な睡眠、目に負担をかけない生活などです。

突然発作が起こる急性型の緑内障を確実に予防することはできませんが、眼の構造上発作を起こしやすくなっている人は、長時間、うつむいたままにしない、映画館などの位場所で目を酷使しない、興奮しすぎないようになどの状況を避けるように工夫してみましょう。発作を起こしやすくなるのは目の老化が進む高齢者、なかでも女性です。

緑内障 関連

ぼんやりとかすんでしまう「白内障」

変化でレンズが濁ってしまう

「白内障」は、水晶体という無色透明の「レンズ」が白く濁るために視力低下を引き起こす病気で、「しろそこひ」ともよばれます。

お年寄りの病気というイメージを持っている人が多いと思いますが、働き盛りの50歳ぐらいで症状が出ることもあります。水晶体の中身は水分とたんばく質からなる成分で満たされていますが、この病気の原因となる水晶体の濁りは、たんばく質が変化したり水分量のバランスが崩れるために起こります。

水晶体が濁ってしまうと、光が網膜まで届かなくなったり、水晶体を通過するときに乱反射を起こしたりして、網膜に正しい像を結ぶことができなくなります。

白内障になると、ものがかすんだりぼやけて見えるのはこのためです。濁りのもとになるたんばく質の変化はさまぎまな原因で起こりますが、もっとも多いのが老化にともなう変化です。

これはごくふつうの老化現象で、40代から徐々に始まり、80代にもなれば水晶体に濁りがみられるほうがふつうです。ただ、老化現象は人によって進み方がまちまちで、濁り方の程度にも差があるので、早い時期から視力に障害をきたす人もいれば、濁る部位によってはまったく自覚症状のない白内かれいせい障もあるのです。このような老化現象による白内障を「加齢性白内障」とよんでいます。40歳代くらいから活性酸素を排除する働きも低下してしまうのでルテインなどで補うと老化のスピードも遅らせることができます。

白内障のタイプと症状の進み方

白内障がどのように進んでいくのか、まずは水晶体の濁り方からです。。晶体は中心部の核、そのまわりの水晶体皮質、さらに外側の水晶体嚢という3つの部分でできています。このうち、核が濁るタイプを「核白内障」といいます。

これには暗くなるとものが見にくくなったり、水晶体が厚くなり、屈折が強まるため近くが逆によく見えるようになるといった症状があります。皮質が濁る「皮質白内障」では光の乱反射が起こりやすく、ものを見たときにまぶしさを強く感じたり、濁りの場所によってはかすんできます。

また、水晶体のうしろ側の皮質が濁る「後嚢下白内障」では視力の低下が速く進みます。いずれのタイプも、初期のうちから異変を自覚することは少なく、ある程度症状が進んでから、目がかすんだり明るいところでまぶしさを強く感じるなどの自覚症状が出てきます。

また、視力低下に気づいたとしても、老眼と勘違いして治療が遅れる場合も多く注意が必要です、老眼の場合は近くのものだけが見づらくなるのに対し、白内障では全体が見にくくなるという適いがあるので、覚えておきましょう。こうして濁りが進んでいくと、やがて水晶体が完全に白濁し、明暗の区別しかつかなくなります。

ふつう、痛みなどほかの症状は起こりませんが、放置すると水晶体全体がふくらんで、「急性緑内障」を起こすことがまれにあります。

白内障の初期症状を見逃さないために

早期発見が治療のポイントになることは言うまでもありませんが、目の病気はほかの病気と比べて初期の自覚症状が乏しいため、発見が遅れることも多いので注意が必要です。自覚症状が出る頃には取り返しのつかない状況まで進行していることが多いのです。

また中高年の場合、なんらかの自覚症状が出ても「老眼のせい」だと簡単に考えてしまうことも大きな問題です。「見えづらさ」の裏には、ときには視力を奪うさまざまな病気が潜んでいることをしっかり認識することが、目の病気対策の第一歩といえます。

白内障の初期症状

では、白内障の場合には、どのような初期症状に気をつければよいのでしょうか。まず、疲れ目がなかなか回復せずに、視力が低下してきたようなときは要注意です。ものがかすんだりぼやけたりするかどうかも、チェックしてください。

この段階で検査を受ければ、ほかの目の病気の発見にもつながります。また、電灯や太陽を見たときにまぶしさを強く感じるのも、初期の特徴的なシグナルです。

加えて、明るいところではものが見えづらく、暗いところでは以前よりものがよく見えるようになることもあります。

また水晶体の濁り方によっては、以前より近くがよく見えるようになることがあります。まるで「老眼が治った」と錯覚してしまうような変化ですが、目の老化が逆もどりし、老眼が治ることはけっしてありません。これも初期症状のひとつですので、注意が必要です。

白内障の治療

放置はNG

自覚症状に気づいたら、けっして「気のせいだ」などと考えずに、すみやかに眼科を受診するようにしてください。医師はさまざまな検査を通じて水晶体の状態をチェックし、白内障なのかそうでないのかを見極めていきます。

ここでは、白内障のなかでもっとも多い加齢性白内障の治療法についてです。さて、どのような治療法を採用するかは、症状の進み具合によって異なります。白内障を治すというと、水晶体を取り除く手術を思い浮かべる人もいるかと思いますが、手術が必要になるのは、水晶体がすっかり白く濁ってしまった最終段階です。

まだ、そこまで至らない進行中の段階では、薬を服用しながら経過を観察していきます。しかし、現在のところ薬物で濁りを消して、もとどおりにすることはできません。薬物治療の目的は、あくまでも症状の進行を遅らせるということになります。

現在、日本で使われている薬には、点眼薬と内服薬がそれぞれ2種類あります。もっともポピュラーなのは、「ビレノキシン」という点眼薬で、これは長期間服用しても副作用の心配はありません。薬を使いはじめる目安としては、目のかすみやまぶしさが強くなるなど、視力に影響する自覚症状が出はじめたときと考えておけばいいでしょう。

手術が検討されるまで

たとえ薬を使っていても、やがて症状が進んで少しずつ見づらさが増してきますが、とりあえずは明るいところでのまぶしさを抑えるためにサングラスを利用したり、眼鏡・コンタクトレンズを装用して視力を補ったりすることで不便さを解消することになります。

しかし、薬では進行を遅らせることしかできませんから、いつかは手術をして、濁った水晶体を取り除かなくてはなりません。また症状の進行段階を問わず、ほかの目の病気を起こしてぃたり、起こす可能性が高ければ、すぐに手術が必要になります。

では、いつ手術を行うのがベストなのでしょうか。
手術の時期は、患者さんの年齢や生活環境、職業的問題からくる「必要性」によって決められます。おおまかな目安としては、車免許更新に必要な矯正視力0.7を切ったとき、視力低下が仕事に大きな支障をきたすときなどがあげられます。また、矯正視力がそれほど悪くなくても、そのほかの自覚症状のあらわれ方が激しければ手術を検討してもいいでしょう。

「怖い」という理由で手術をためらう人もいますが、現在では治療法も進歩していますから痛みもありませんし、手術を避けて日常の不自由に耐える必要はまったくありません。安心して受けてください。

手術自体は短時間ですむので外来でもできますし、入院する場合も3~4日あれば十分です。そして現代の手術は、濁った水晶体を取り除くだけではありません。次に、今では主流になっている眼内レンズを挿入する手術についてです。

治療の主流となっている眼内レンズ

従来は、白内障の手術といえば、濁った水晶体をそっくり取り除いてしまう方法がとられていました。ところがこの方法では手術後どうしても強い遠視になるため、つねに眼鏡をかけて矯正する必要があります。

この不便さを解消するため、現在では水晶体の摘出後、そのかわりとして眼内に人工レンズを挿入する手術が主流となっています。ただし、この「眼内レンズ」がすべての患者さんに向くわけではありません。この方法が適応しないのは、まず糖尿病の患者さんです。

さきに説明した糖尿病網膜症を併発していると、治療の際に眼内レンズがじゃまになることがあるためです。ですから糖尿病の患者さんが眼内レンズの挿入を希望される場合には、網膜症がないか、あっても重症でなく、血糖値が安定している時期に限られます。

同じように緑内障やぶどう膜炎の患者さんも眼内レンズを入れるかどうかは、慎重に検討しなければなりません。また、向かないというよりも眼内レンズによる視力矯正が必ずしも必要ないのが、強度の近視の患者さんです。これは、水晶体を取り除くことによって、それまで強すぎていた屈折率が弱まり、正常な状態に近づくからです。なお、眼内レンズは一度入れてしまえば、取り替える必要はありませんが、緑内障や黄斑変性症など、網膜や視神経の障害を併発している場合は、眼内レンズの効果がはっきりあらわれず、視力の回復が思わしくないことがあります。

手術によって「見え方」はどう変わる?

手術に際しては、事前に十分に理解しておくべきことや決めておくべきことがあります。ここでは、手術によって見え方がどのように変わるのかについてです。

まず視力ですが、基本的に白内障以外の病気を起こしていなければ、白内障を起こす前の視力には回復します。しかし、視力低下の原因が白内障以外の黄斑変性症や網膜症、緑内障にもある場合、手術で水晶体の濁りだけを取っても視力はそれほど回復しません。

また現在では、眼球内に「眼内レンズ」を挿入する手術が主流ですが、レンズを入れると手術直後は視野全体に青みがかって見えるようになります。これは人間の水晶体が、厳密にいうと無色透明ではなく少し黄みがかっているのに対し、人工のレンズは無色透明なために起こる問題です。黄色と青色は互いに補色の関係にあるので、普段黄色がかった視界を正常と感じている私たちの感覚には、黄色が抜けた視界は青みがかって映るというわけです。

しかし、慣れてくれば気にならなくなる程度の変化ですし、この変化をなくすためにあらかじめ黄みがかっているレンズもあります。もうひとつあげるとすると、手術後はややまぶしさを感じやすくなります。これはどんな色調のレンズを挿入しても起こるので、サングラスをうまく使って対処することになります。
そして、手術をすればあらゆるものが良く見えるのかといえば、そうではありません。いったいどういうことなのでしょうか。

どのような「見え方」を希望するのか、手術前に決めておこう

手術をするときにいちばん大切なのは、手術後の生活でどのような見え方を希望するのか決めておくことです。白内障の手術ではまず濁った水晶体を取り除いて、ほとんどの場合人工のレンズを挿入することになります。

このレンズは水晶体と違い、対象物の距離によって厚みを変えることはできませんから、裸眼でよく見える距離と、眼鏡をかけなければよく見ぇない距離がどうしてもできてしまうのです。そのため、どの距離をはっきり見たいのかをよく考えて、挿入するレンズを決める必要があります。

選択肢は、次の3通りになります。まず、近くのものをはっきりと見えるようにしたい場合です。この場合は、近視の状態になる人工レンズを使用します。手術後は、手元の作業は裸眼でできますが、遠くのものを見るときには眼鏡をかけることになります。

2つめは、遠くのものをはっきりと見たい場合です。映画を見たり歩いたりするときには裸眼のままで、文字を書いたり本を読んだりするときは眼鏡を使うことになります。

3つめは、軽い近視の状態に近いもので、中距離にピントを合わせる場合です。手元の文字は少し離せば読めますが、細かい文字は見づらくなります。テレビは裸眼で大丈夫ですが、映画館でスクリーン上の文字を読むには、眼鏡が必要になります。また、いずれのタイプでも人工レンズが挿入される位置は、本来の水晶体の位置と少しずれるので、ものがやや大きめに見えるようになることも覚えておいてください。

水晶体の摘出法 その1「超音波乳化吸引術」

まずひとつめの「超音波乳化吸引術」は、水晶体の中身を細かく砕いて、外に吸い出すという方法です。最近では一般的な方法で、次のような順序で進められます。
まず、角膜と強膜の境目あたりに3 m程度の小さな切れ目を入れ、水晶体嚢の前側を切り取ったあと、そこから超音波を発振する器械を差し込みます。次に器械から出る超音波の振動を利用して、水晶体内の核を細かく砕きます。最後に吸引装置で水晶体の中身を吸い出し、外側の水晶体嚢だけ残した状態にして眼内レンズを挿入します。所要時間は数十分程度です。

水晶体の摘出法 その2「嚢外摘出術」

超音波乳化吸引術が水晶体の核を砕いてから摘出するのに対し、こちらは核をそのままの状態で取り出す方法です。したがって、眼球に入れる切れ目が、超音波乳化吸引術の2~3倍と大きくなります。嚢外摘出術では、切れ目から液体を注入して水晶体の核と皮質を分離させたうえで、核から取り出していきます。
核と皮質を取り去ったあとは、「ヒアルロン酸」を水晶体内に入れ、水晶体が丸い形を保った状態にして、眼内レンズを挿入します。この方法には、大きな切れ目のため手術後に角膜が歪んで乱硯になることがあったり、視力がもどるまでやや時間がかかるという難点があります。

眼内レンズはこうして挿入される

手術で水晶体を摘出したあとは、眼内レンズを挿入して視力を調整します。眼内レンズの大きさには直径5.5mと6mの2種類があり、位置を固定するために2本の「ループ」がついています。

白内障の手術では、水晶体の中身と外側の水晶体嚢の前部(前嚢)を取り除きますが、水晶体嚢の後部(後嚢)と眼球内で水晶体を支えるチン氏帯は残しておき、ここにループをかけて眼内レンズを支えるのです。

また、眼内レンズには、やわらかい材質と硬い材質の2種類があります。現在、よく使われているのはシリコーンまたはアクリル・ソフトでできたやわらかいタイプです。
このレンズは、2つに折ったり丸めたりできるので、小さな切れ目からでも眼内に挿入することができます。これに対し従来から使われているタイプは、飛行機の風防にも使われるような硬いプラスチックでできています。こちらは挿入するときに曲げることができませんから、やわらかいタイプに比べ、眼球に入れる切れ目を若干大きくとる必要があります。

どちらのレンズを挿入しても見え方に遠いはなく、手術後には眼鏡を併用することも変わりません。最近では、眼鏡を使わなくても遠近どちらも見やすい多焦点型の眼内レンズも開発されていますが、視野にゆがみが生じるなど問題もあるため、まだ一般的ではありません。

術後の経過

手術が終われば、次のように過ごし、回復に努めます。まず、手術後30分程度は安静が必要です。それ以降であれば歩いてもかまいませんし、食事も通常どおりとることができます。

2日めぐらいからは視力が回復してきますので、疲れない程度であればものを見ても問題ありません。よく見えない場合には、角膜の腫れや前肩部分の炎症などの理由が考えられますが、これらは時間とともに解消されるので心配いりません。

この間、入浴は首から下のシャワーであれば大丈夫ですが、洗顔と洗髪は許可が出るまで控えなくてはいけません。また、術後しばらくは、炎症や感染を防ぐために点眼薬をさすことになります。そして傷口が完全に治るまでは、目を押したり強くこすったりしないよう注意します。

傷口は、およそ1ヶ月程度で固まります。目に負担をかけないように心がければ、仕事への復帰も早い時期にできますが、激しいスポーツなどは、けがの危険もあるので術後1ヶ月程度は見合わせ、再開する時期については、医師とよく相談してください。手術後2ヶ月ほどして、視力がほぼ回復し安定してきたら、眼内レンズの焦点以外のところを見るための眼鏡をつくります。それまでの1~2ヶ月間は視力が安定しないので、仮のものをかけて過ごすことになります。

術後トラブル

無事に手術が終わっても、次のようなトラブルが起こることがあります。手術後も目の異常はないか、引き続き注意深くみていくことが大切です。

  1. 後発性白内障
    手術後数ヶ月~数年たつと、眼内に残した水晶体のうしろ側の膜が濁り、目のかすみがあらわれることがある。治療に入院の必要はなく、特殊なレーザーで問題の部分を取ってしまえば、視力は回復します。
  2. 緑内障
    手術の際に眼内で出血したり、治療薬の影響で眼圧が高くなってしまうことがある。一時的な上昇ですむ場合もあるが、上がり方が異常な場合は治療が必要です。
  3. 網膜剥離
    手術後に網膜が剥離を荘こしやすい状態かどうかを調べ、必要があれば予防処置をとります。
白内障の症状が軽減、よくなったなどの口コミ

まだまだ医学的な根拠がわかっていないものの多数ありますが、それでも実際に試してみてよくなったという情報は、自分ももしかしたら…という希望につながります。最近は、ブルーベリーの5倍のアントシアニンが含まれるというアサイーベリーの噂はよく耳にします。白内障も老化現象のひとつであることに代わりはないので、アントシアニンのようなポリフェノールが抗酸化物質として働きよい効果をもたらすことにn異論はありません。